アサリの島流し 114日目 - ねずみの一生
夜の青が鮮やかになった。
…だったのだが、最近猛烈な湿度と共に再会するようになった。
が。暑さとともにすごく増えたのはネズミ。パンや餅、お米の袋も齧られたりとお客さんの食事に関わる被害を防ぐ為、最近はもっぱらネズミ対策に頭を悩ませた。
アイテムを使ったり掃除や補修、戸締りとかいろいろな対策もした。
それが効果的だったのか、最近今度はよくネズミが倒れているのを発見するようになった。
よかった、ということなのだが。
ネズミが哺乳類である故か、やはりそれを見るとなんとも言えない気持ちになるのだ。
ネズミ捕りにかかっているもの、毒餌を食べたのか倒れているもの、小さな手足に目がいくと、どうにもなんとも言い難い気持ちになる。
しかし、主食をもっていくだけでなく電話線もやられちゃうし、ねずみ算というくらいの繁殖力。彼らに抗わないと我々の生活が危うくなる。お互い自然に暮らす生き物だ。
などと考えながら小さなねずみの死骸を見ると、お前さんの一生はどんなだったろう?と思う。
ここに立っている私とお前さんは、きっと思うよりずっと、何にも違わないんだろう。
人間の人生はねずみよりずっと長いし、なんて思ってたら、いやいや。時間は加齢と共に加速してすぎてっちゃう。記事を書かない間に二週間たつくらいだ。
その間にあったことを写真だけで綴ってみる。
言葉を省くと紙芝居みたいだ…。
それぞれ島ならではのおもしろいことが詰まっているのだが、ひとつひとつはまたじっくり別の記事に。
ねずみの一生がもし感覚的に人の一生と同じだとしたら、この二週間は、
「あの小さな身体が私の目の前の道を横切った時間の長さ」
に等しいのかもしれない。
私が横切った道の前にいるのは、母島の山、煌々とした月、さそり座にある火星とアンタレス、太平洋、あるいは卵を産んだウミガメか。
ここではいつも、自分より何か圧倒的に大きなものに囲まれていると思う。
それがとても身近で、けれど壮大で、そんなことを思う度、自分の中の塊が心地よく風に溶けていくような気がする。
おまけ。
二週間の内に日焼けイベントが多かったのもあり、ここのところ色の黒さがさらに激しくなってます。
アサリの島流し 100日目 - ライブ!スポーツ!主にビール!
カタツムリがご無沙汰になるくらい晴れが続いています。気がつけば島流しも100日目。なんと!
先週末はバレーボール大会とアウストロライブ、テニス部に野球、と怒涛のごとく遊んでいました。という日々を今日は駆け足で書いてみます。
いろんな職場の人が混じったおもしろチームに参加したバレーボール大会。
(打ち上げ焼肉の写真しかない 笑)
謎のチーム”G”はリーグ戦最下位敗退ながら、飲み会(本番)にそなえ終了まで1人も帰らないというポテンシャルの高いチームでした。笑
バレーを通して初めて仲良くなった人もいて、負けたにもかかわらず、試合中から就寝まで、ひたすらずっと笑い転げていた気がする。
翌日は二日酔いを引きずるメンバーもいながら、アウストロライブ。
この日一緒にやった涙そうそう会は練習からほんと楽しくて、また一緒になんか練習しようと企み中。
三線:ぞのちゃん、のりちゃん
ウクレレ:みなちゃん、おそのちゃん、あいちゃん、たえこさん
フラダンス:普段フラに参加してるたくさんの人
人生初の大編成ガールズバンドはとっても華やかでした。
たくさんの人が演奏も聞くのも楽しんだ日で、この島らしい素敵な会だったなあ。
演奏しながらPAというツワモノ先輩!
おつかれさまです!
店内はいっぱいで、外野で盛り上がる人も 笑
私ソロはこのイベントトップバッター
1.レモン林(小笠原古謡)
2.ハンキーパンキーは聞こえない
3.流星群の夜に
やりました。
1日通して、人々にとって音楽とはなにかに向き合えた日でした。
すごくよい経験をしたなあ!
そして…おまけに…
翌日はテニス部練習からの野球!
最近、筋肉ばかり育つな…( ;´Д`)
ほんとにここは、飲んで動いて元気いっぱいの島ですな。
あっ、みんなちゃんと仕事もしてますからね!苦笑
アサリの島流し 94日目 - 蓄えられるもの
西日の時になると、世界はいつもより一段と活き活きして映る。地球の横顔はとても美しい。
忙しかったGWが終わった休み、久々ひとりゆっくり浜で飲みながら記事書いてみてます。
5月に入って仕事の合間の遊びも本当に慌ただしかったけど、最近では仕事だってなんとなく体に染みついてきた感じがする。
この島の宿の料理をやるようになって、今まで縁遠かった魚料理も毎日するようになった。スーパーの魚売り場ではで馴染みが薄かったこの場所独特な名前も、日常の中で現われるようになった。
目下、マグロやこの辺の巨大なサワラの切り方なども教えてもらい練習中である。
お金以外でも中々の財産を貯蓄している気がする。
しかしこの島でもう一つ目立って蓄えられそうなものが…
筋肉!体力!
元からスポーツ盛んな島ではあるが、5月6月はイベント目白押しなので、季節が夏らしくなってきてから急に忙しくなってきた。
サッカーやってる同僚と練習帰りの夕陽みたり。
テニスで真っ黒に日焼けしたり。
※私の腕じゃないけどイメージです(;^_^A
昼休みランニング部結成したり!
泳ぎ行ったり!
悲しいかな私はまだ苦手な水泳練習中です(´Д` )
みんなすげぇ距離泳ぐんだもの…。
飲みながら踊る人たちいたり!
そしてよく運動し、よく飲むので肝臓も鍛えられてそうです。
今週は島のバレーボール大会。月末は小中学校の運動会(普通に大人も出場する)、来月は一番の祭り返還祭、駅伝もあるらしい。
ここの人本当にみんなよく動くから、私も身体がやたら鍛えられて、予想してなかった財産が身につきそうです(;^_^A
※友達が撮ってくれた、お見送りしてるとこ。
たくさん蓄えて、それは音楽にも…。
しっかり歌うぞー!
AUSTORO ACOUSTIC LIVE
5月14日 土曜日
開店 18:00
開演 18:45
終演21:00
当日はドリンクのみの営業です
食べ物は持ち込みOKです。
ここの島来て一番よく飲みに行ってる気がする飲めるレストラン、アウストロでのイベントに参加します。
と、いつもブログを見てくれている皆様は内地の方々が多いので船が今からだとたどり着かないのですが…(;^_^A
こっちでもライブ告知、ってなんか変な感じ!
とにかく今はひとつひとつ、大事なものを集めて蓄えて、重ねています。
この島の夕暮れはいつも、とても幸せな感じがする。
書いているうちにビール空いちゃったので、買いに行ってきます。
また!みなさま良い夜を!
アサリの島流し 80日目 - 魔法にかけられて
車とバイクの免許を取る、ということが果たせぬまま30代に突入してしまった私にとって、ドライブとは夢の出来事であった。普通に大したことではないかもしれないが、様々な事情で果たせなかったドライブ。
ああドライブ。
それはこの島で人生ファーストドライブをする為だったのだと思うと…人生とはなんとドラマティック!(テンション)
母島の集落があるのは南から1/4や1/3位の場所で、南崎には歩いて行けたけど、北にはさすがに行けなかった。小さいようで結構大きな島である。まだ大部分が未踏地。
そんな中、先日バイクを譲ってもらってやっと足を手に入れた!最初は自転車より遅いくらいのおっかなびっくりも、毎日チョイ乗りを繰り返して随分慣れてきた。ようやく初めての免許のいる乗り物も楽しめるようにもなった。
これは…行くしかない!
ドライブ!
仕事が早く終わってみつけたチャンス、エプロンを放り投げて飛び乗った。
北港までの道のりはどこもかしこも目新しく、絶景だらけ。晴れた陽光差し込む森と広大な海が交互に現れる美しい山道が続く。
行ったことなかった場所がたくさんあった。
そして走ること30分ちょい。
北港。
地図はこちら。
魔法がかかったような場所だった。
とても静かで透き通るような海がずっと果てまで続く。
岸壁…のあとかな?
今日は行かなかったけど、ここから大沢海岸へ続く道。幻の生き物がいそうな鬱蒼とした森のトンネル。
この場所で私は、すっかり魔法にかけられた。
すうっと吸い込まれる空気をどう表現したらいいかわからない。
ロース記念館の解説してる人生の大先輩から聞いた、島に今の20倍人がいた時の話を思い出す。今は道すがらに工事や植物を手入れする人がいるだけの、ほんとうに何もない港。
でも多分、私はここに丸一日ずっとただ座っていても楽しいと思う。
この世にこんな場所があることだけで、地球に生まれてよかった気がするくらいだ。
母島に素晴らしい場所はたくさんあったけど、こんな場所に来たのは初めてだ。
小さな頃、CMでとあるRPGゲームが流行ったことがあった。その頃の小学生だった私もプレイして、その中で出てくる「僕の場所」「僕の音」を探す冒険に影響されて、とても夢を見たのを思い出す。
今日はまるで、僕の場所、との出会いだった。
ここで私は、僕の音、を探すんだろうな。
音楽でもなんの作品でも、毎日必要な何かでも、なんでも…十分年齢は大人になったことだし、私もそういう誰かの「僕」の夢を、次に作ろう。
戻ってきた夜、同僚と飲んでしゃべりながら、いつもの脇浜に寝転がって丸い天球を見ていた。この島に来て、星は今まで思ってたよりずっと早く動いてるのを知った。
あの場所で私がかけられたのはきっと、世界が一段と素敵に思える魔法だったんだろう。
アサリの島流し 77日目 - 自由の集い
昔から地図を見るのが好きだった私は一時「人跡未踏」という言葉にハマって、やたらwikiサーフィンをしていた時期がある。
もしもそこで暮らすなら?
そのサバイバルや生活の不自由を細部にわたって妄想するのが大変楽しかった。
だからたまにある、船でしか来れない離島ならではの不自由についても、相当な覚悟をして来ていた。
が。
最近まったく不自由を感じない…。
むしろ感じなさすぎて、お客さんから何か不自由について聞かれて困るくらい、不自由を感じない…。
コンビニがなく店は18時で閉まるし休みが多いこと。自販機の謎の種類。パンやケーキが日によって売っていないこと。飲食店は5・6軒しかないこと。郵便局の窓口でしかお金を預けたり引き出したりできないこと。物は入港日にすべて届くこと。
それらすべてが1ミリも不自由と思わなくなった。慣れとはすごい。
というか、最初からそれで良かった…気さえしている。
本来、これで充分よかった。
不自由を感じなくなってから、余裕ができたのかすっかり慣れたのか、最近は友達も出来たし、うっかり毎夜飲んでる気がする。
とにかくサークル活動や集まりも多いし、仲良くなれた友達と集まる輪は、重なったり重ならなかったりしながら幾重にもある。
人口に対して考えられるよりずっと、そういう輪が多い。
輪ごとの連絡は、やはりLINEとかSNSでやりとりしたりどこでも内地と同じなのだが、圧倒的に多いのは実際に人に会って話す時間。
もっといえば、待ち合わせや通信での連絡がないのに集まることもある。
満月のカカ、天気がいい土日のサンセット、澄んだ夜の星空観測、小さな岸壁やがじゅまるの下、祭りの夜…。
気がつくと自然に集まってる。
誰がいるから、っていうよりそれを好きで1人でも楽しみたい、って人が気がつけば集まってる。
それは、ほんとに自然にそれぞれ無理しないで、集っているのだ。
脇浜の隅ではネムリブカがよく集って昼寝したり、波打ち際に海鳥が集まったりしているのと、この島の集まりはあまり差異がない。
これは、ほんとに奇跡的なことなんだと思う。
ヒトは本来、こういう生き物なのだろうな。
だいぶ私も、ヒトらしくなりつつあります。
↑すっかり海のおじさんにしか見えない昼休みの著者近影
アサリの島流し 69日目 - 梅雨と祭りの季節
別れが多かった年度末から、たくさんの出会いがある年度始めになった。雨が増えたのと時を同じくして、職場のスタッフも増えた。最近は新しい仲間も馴染んで、賑やかにみんなでしゃべったり飲んだりも増えた。
私も、昼休みすれ違う人の9割が知っている人、になって、すっかり日焼けの肌色が濃くなった。
島に来る前に「はっきりとした梅雨はない」という情報を聞いたけど、一応梅雨らしき時期があり、それが4月の今くらいからだそうだ。
カタツムリが増えて、オタマジャクシはカエルに変わり始めた。
噂に聞いていたアフリカマイマイとカエル達はやはりでかい。虫が苦手な新しいスタッフが絶叫する黒いあいつもなかなか増えてきた。
でも私はといえばすっかり慣れてきちゃって、センサー故障してるのか素通りしてしまうが…。
島で雨が降ると大抵盛大だ。換気扇や食洗機のスイッチつけたまま?ってくらいの轟音とどろかせてスコールのように降る。
雨上がりは、山から流れたのか島の赤土で道が真っ赤になってた。
砂浜にもしっかりと雨の跡が。
いつもは透き通った海の水も濁ってる。
でも雨上がりは生き物共通の喜びを見せてくれる。
今回は3日続いたが、雨が降ったり止んだりの間は鳥達も食事がなかなかできないので、雨が上がるとみんな一心不乱に草むらを啄むみたいだ。
人間の私も久々の太陽で光合成、気持ち良い伸びをする程。
花ももちろん待っていたのだろう。
しばらくは雨と仲良くしなければならないこの季節、それでも楽しみなこともある。
それより少し先駆けて、こないだの週末、はは丸ナイトというお祭りがあった。
島唯一の交通手段である船、ははじま丸。
その船員さんや、内地から来たミュージシャン、島の人たちによる様々な島ならではの踊りや音楽のパフォーマンス。私の職場でもお祭りで振る舞われる食事を作ったりした。
先月のライブイベントからまた、私もだいぶ知ってる人が増えて、地元のお祭りって感じで楽しい夜になった。中でも練習に参加させてもらってる小笠原太鼓が船の上から大地に響く様にはとても感動した。
宿泊してたお客さんもすごく興奮して楽しいって話しかけてくれて、なんだかちょっと誇らしかった。
と…あれ?いつの間にか、私もここが地元のような気分になってるのだなあ。
季節の変化がわかりにくいここでも同じ地球の島。やっぱり、少しづつ変わる。
3ヶ月目に入って、そうだ、次の季節を迎えたんだ。
この頃は、ここの島の風の匂いでホッとしたり、すっかりぐっすり眠れるようになった。
新しいスタッフに自分の好きな場所を案内したりもするようになった。
そして、来月の5/14には初めて島のイベントで演奏をすることにもなった。
この島の新しい命が、梅雨の雨とちょっと早い夏の太陽をぐんぐん吸い込んで伸びする季節。
私も、風と海の音を聴いて眠って、ぐんぐんこの島が好きになってる。
アサリの島流し 63日目 - サザンクロス
星の王子様を読んだ時、あの小さな星に王子様が1人で住んでるなんて変な話だ、と思った。
地球から考えたら、やはり空想のお話だし、と思った。
けれど、サン=テグジュペリは見たんだろうな。
砂漠で、星空を。
写真)暗い夜の海に見える灯台の光。この記事は星空の話だけど、本物星はiPhoneじゃやっぱりとれないので(;^_^A
63日目、寝るにはまだ早かったから、何度目かもわからない「サザンクロスを見に行く」トライをした。
一部見えるこの島で、確かに何度か南十字星のうち一つは見えた、というのはよくあった。
けれど今日は3星まできっちり見えた。
暖かくなって、夜の祭りも外飲みもTシャツでまあまあ平気になった。
昼は暑すぎて、アロエがいるくらい日焼けしはじめた。タンクトップに短パンが当たり前になってきた。
すると海水の温度も上がったし、靄がかかりやすくなった。南十字星は水平線に近く見えるから、それがまともに影響してしまう。
それでも星と地球、あと島の場所の都合、南中時間がやっと23時頃に早くなってきて、見やすくなったのは最近だ。
星空の状況はやっぱ運だ。
新月に近くないと、意外に地味な光のサザンクロスは見えづらいし、天気とタイミング。
最近は出会いや別れで飲み会が多かったし、2カ月すぎてなんとなくよく遊んでもらう人もできてきて酔い夜も多くなった。
でもこの島は1人の時間も楽しい。星空見てるだけで人には見せられないニヤニヤ顔をしてる(´Д` )
水平線から空がはじまると、星空は見上げなくたってまっすぐ前にも見えてる。
ここでサザンクロスが見えて内地で見えないのは、水平線がどのくらい上がるからなのか考える。地球の曲面率を想像する。
星たちはじっと見てると、明るさで距離感がでてくる。星空っていうのは黒い画用紙の白いポツポツ…ではなくて、奥行きのある途方もなく地球よりでかい世界だとジワジワ実感してくる。
私は私のサイズを省みる。
なんだ、王子様の星とここはそんなに変わらないくらい小さいじゃないか。
44回日の出を見るにはちょっと広いかもしれないけど、私ら生き物はいつでも自分の半径いくつかの世界にいるんだな。
世界…って言葉がどこを指すのかわからないけど、宇宙ってものは想像もつかない広さ、なんて言う前によく見える場所から見たら、とてもデカイけど想像出来るんだ。
星空は別の世界の話じゃなく、只中に今いるんだろうな。
ちょっと抽象的かもしれないけど、その感じはこの島で暮らす感じにとても近いんだ。
明日も晴れたら、太陽の下に行って誰かと遊んだり、星空の下で誰かと飲もう。
そしていつか、砂漠の星空も見てみたいなと思う。