アサリの島流し紀行

東京・高円寺から貯金をするために小笠原諸島へ住み込みバイトに行ったバンドマンの日記。都会の超夜型ライブハウスマンが1000kmはなれた船でしかいけない島で人間に戻っていくドキュメントでもあります。Twitter→@asari309 asari official WEB→http://asariweb.net/

アサリの島流し 350+350日目 - 母になる島

時々、夢の中で私は船に乗っている。夢の中だから決まっておかしな話になっているけど、いつも朝になったら父島に着くってなっているからあの船に乗っているんだと思う。 あれから一度だけその船に本当に乗った。それは一航海でお祭りでとても慌ただしくて、…

アサリの島流し 350日目 - 350日の今日

新しい仕事、新しいコミュニティ、新しい家、新しい毎日。前とは違う日を過ごすのは簡単だ。朝起きて、新しい今日は毎日やってくる。 未来もすぐ過去になる。当たり前にそばにいた人はいつのまにか思い出の棚に収まって、当たり前に流れた時間はまた、特別な…

アサリの島流し 340日目 - さよなら母島

”僕らの住むこの世界では旅に出る理由があって、誰も皆手を振ってはしばし別れる” 12月頃から脇浜で1人ギター稽古しにいく時、この歌をよく歌っていた。 その度にグッと何かを飲み込んだ。 お別れライブが終わって、やっと腹を決めたようにようやく荷造りに…

アサリの島流し 337日目 - 人生で一番幸せ者だった夜

なかなかうまく書けなかった。 やっと1/9のライブについて書きます。 今回はどうしても短くできなかった。長文をお許しください。 歌うことについて、いや演奏することについて、考えたり発見することはいくつもあった。初めは「歌うこと自分を表すこと」だ…

アサリの島流し 335日目 - さよならの形

さよならの仕方には形がある。 じゃあね、またね、おつかれさま、元気でね、良い旅を、幸運に恵まれますように、再び会おう、ありがとう…等 この島と私とのさよならはどんなさよならだったのだろう。 離れた今東京にいる私と、あの島は再び1000km海を隔てて…

アサリの島流し 331日目 - 走れ!乳房山登山隊

離れていても繋がって、どこかのできごとを知ることができる時代である。 島に来てからこの1年の間しこしこ書き連ねたこのブログを「読んでるよ」と声かけてもらうことが、季節を追うごとにどんどん増えた。 バンドの知り合いやお客さん…仲良くなった島民…10…

アサリの島流し 324日目 - 南の島の年越しは延長15回の夏休み

あけましておめでとうございます! 太平洋のど真ん中より、今年もよろしくお願いします。 ここ数年、ライブハウスで年越し36時間過ごしていた私、昼型生活になり今年こそ肝臓に優しい寝正月を… とはいかず、やはり今年も…飲んで仕事弾いて飲んで仕事…という…

アサリの島流し 320日目 - もういくつ、あといくつ。

最近は寒くなって見慣れないコート姿も増えてきた。(と言っても19度とかで、内地の本当の冬の人からしたら小春日和か!だけど…。) サービス業の師走が忙しいのは、都会でも南の島でもやはり同じで、飲み会やイベントが続くのも同じく…。 寝る間を惜しんで走…

アサリの島流し 317日目 - 音楽というもの

演奏が終わって、次はああいうのやりたいね、って話するの。また今度はこんな感じで。 また今度がすぐにあるということ。 不意にふと、ああ、また今度がすぐにはできなくなるのか、と考えた。 1年ほど前に高円寺を離れる時、送別会という名の大セッションパ…

アサリの島流し 315日目 - 手の中にある未来

今日は真夜中の呟きと少しリンクしながら。 いい時に通り雨が、さあっと降って私達は帰る気になった。 広い地球の中の途方もなく広い海の本当に小さな一点にも満たない島で、世界を夢見て眠る青年達の野心の話。ぶつかり合うこともあればそれぞれの描く幸せ…

アサリの島流し 307日目 - その先の場所

350日目のその日、東京・高円寺へ。 この一年で知った知らなかった(そして、素敵だったから走りメモした)音楽は、一年に300回ライブ見た年より多い。 音楽は音楽の中になく、人生の中にあった。 知るということの奥深さを知るのは、中学生の時に出会ったソク…

アサリの島流し 288日目 - 巡り合わせる星

縁という巡り合わせは、七夕の様にそれぞれに自身の道を動いてる星と星が、まさに巡っている中で合わさる瞬間である。 それは私が高円寺にいても、大阪や博多にいても、母島にいても、それを注意深く待っていると、偶然、巡りが合わさる時に訪れる。 すべて…

アサリの島流し 265日目 - 幸運な同級生と南の島のハロウィン

大人になってから出会う同じ歳の友達と言うのは、無数に入り混じった中に同じものをひょっと見つける様で、有り難い。 けれど都会の暮らし中では年齢の話をしなかったり、私の歳になれば見た目もすっかり職業に染まるので、中々見つけづらい。 そんな時にふ…

アサリの島流し 260日目 - 形のないお土産<内地帰省編 下>

東京の街は何かが充ちている。 それは、ちょっとタイプは違うけど、森に似ている。無数の気配に囲まれている。 違うのは、森はなんとなく話しかけられるけど、街は話しかけづらい雰囲気、というところ。みんなすくっと立っている。 森のwelcomeな気配って…な…

アサリの島流し 254日目 - 会いに行くと決めたから<内地帰省編 中>

自分や友達、人がそれぞれの速度で少しづつ変化するのはまるで夜空のようである。 星々がそれぞれの速さで動いたり、近くの星は星座を形作ったり、その星座がそれぞれの位置を動いていく。 島に来てから夜空の星をじっと見てると、止まっているように見える…

アサリの島流し 250日目 - 26時間のタイムトラベル<内地帰省編 上>

ちょうど250日前、初めて乗ったおがさわら丸の中、この海はいったいどこまで続くのだろうかと思っていた。 大島を過ぎると本当に何もない海が、夜が明けても続く。でも再び乗ってみたらよく知った道になっていた。 どんな場所でも体が覚えた場所は馴染みの場…

アサリの島流し 246日目 - 月に梯子をかける

感覚にも梯子がある。 壮大でかけ離れたように感じるものでも、その間にあるものが飛び石のようにつないで、梯子をかけた様にリアリティを得ることがある。 例えば夜空なら、見上げた木の枝、三角屋根の端、電線、雲…。 ない方がいいようで、あった方が夜空…

アサリの島流し 239日目 - 必要なものと不必要なもの

この島に来てまもなく9か月目に突入する。 私の携帯は息を引き取りましたが、危篤のときにバックアップを何とか取れたので少しづつ9月の写真を交えながら、今日は最近ちょっと考えたことを書いてみます。 最初は素晴らしい景色や珍しいもので目を白黒するの…

アサリの島流し 230日目 - 9月のこと

忙しさに押し流されている間に2つのお祭りがあったりして、書くことはとてもある。そんな時に…ついに恐れていたことが起きてしまった。 スマートフォンのバッテリーが天寿を全うした模様。 写真のバックアップは…5月の運動会以降がまだとれておらず…。 あれ…

アサリの島流し 195日目 - 夕焼けとJAMMIN、そしてサラバ。 <嵐の父島その3>

嵐が去った。 私の心中でもようやく雨風が止んだので、3日目にしてようやくギターケースを開けた。 まだ風が強い昼時までは、すっかり仲良くなった皆と買い出ししてカレーを作る。 昨日はご馳走になった方が多かったから、生協と農協で手に入った材料でサラ…

アサリの島流し 194日目 - そして誰もいなくなった<嵐の父島その2>

……。 続きを書くのが中々進まなかった…。 仕事も思い出も、まだしまい切れないほど山積みだったので…。 ぱっぱと上手くいかないこともあるけど、そんな時はさ、少しずつコツコツ進めていこう。 父島へ行った2日目の朝。 友達達は精算を早く済ませ、皆でパン…

アサリの島流し 193日目 - 乙女たちの音楽<嵐の父島その1>

「音楽」っていうものは「生きる」の中に含まれるものである。 その「生きる」がなんかリアルなこの島だからか、専門的ステージもCDショップもないけれど、ここはほんとに音楽にあふれている。 昼休みにバンドをやっているわけでもなく年代や職業、既婚未婚…

アサリの島流し 180日目 - 嵐が止むまで待って

島で暮らすということ。 ある日の昼下がりに見た景色。 こんな美しい場所で余生を過ごすなんて、まるで映画のような人生だと思う。 しかしこの小さい島は、8月の嵐から逃げることができない。 この南の海にぽつんと浮かぶ島は、もっと南で生まれる台風の、ち…

アサリの島流し 167日目 - 海へ行くはずじゃなかった?

つい。私の大好きなアルバム名を記事タイトルに拝借してしまいました。この曲はこの島よりは昔住んでた鵠沼海岸あたりの海って感じするけどね。 ブログの更新がないと、何かあったんじゃ⁈と心配いただいてるらしい…という情報を最近血縁から聞いて、私の血液…

アサリの島流し 161日目 - アーボマンと島っ娘ライブ

この島には海と森がある。 私達にはBECKがいた。 アーティストのBECKでも、漫画のBECKでもない。犬のBECKだ。 それは今も私達の作ってきた音楽と私の手が描く線の上を、鼻水垂らしながら元気に走っている。 人の愛と人の手仕事には、そういう時間を超えてい…

アサリの島流し 140・141日目 - 母島返還祭の夜

素敵な思い出や景色に出会うと、素敵な歌、絵、作品が作れるよ、などと言う。 が、そんなことはない、と今は思う。 そういうことがあり過ぎると、そこにいる間は本当に手が止まる。 一瞬一瞬が大きくなり目が離せなくなって、この1ヶ月ほど、私はぴったり筆…

アサリの島流し 137日目 - 父島へ行くの巻 その2

小笠原に来てから、たまに「もう実はすでに死んでるんじゃないか?」と思う。 だって、今までディスプレイや本で見たり、いろんな場所に行ったけど、こんなに尋常じゃなくきれいな景色だらけなんだもの。 もしかして、もう天国にいる? 父島ユースホステルの…

アサリの島流し 136日目 - 父島へ行くの巻

この頃はだいぶ島の生活に慣れたのか、出かけないでゆっくり過ごすことも出てきた。 けれど日々の折々、私の中の小さな箱の蓋が少し開いていて、過ぎていった遠い時間の景色が所々に現われる。それは今見える景色という新しい棚のあるべき場所へ、静かに自然…

アサリの島流し 125日目 - 1000キロのグッドバイ

仕事を上がって寝こけている間にすごいスコールがあったらしい。入港で届いたダンボールがぐちゃぐちゃで破れるほどの。 雨はほんと突然降って、夜になって上がった。 私はふと思い立って、以前から乳房山で雨上がりに見れると話に聞く、透明なオカモノアラ…

アサリの島流し 114日目 - ねずみの一生

夜の青が鮮やかになった。一足先の夏が続いたため雨が少なく、こないだまでカタツムリやカエルは道路で干からびた姿をたまに見かけるばかり。…だったのだが、最近猛烈な湿度と共に再会するようになった。が。暑さとともにすごく増えたのはネズミ。パンや餅、…