アサリの島流し紀行

東京・高円寺から貯金をするために小笠原諸島へ住み込みバイトに行ったバンドマンの日記。都会の超夜型ライブハウスマンが1000kmはなれた船でしかいけない島で人間に戻っていくドキュメントでもあります。Twitter→@asari309 asari official WEB→http://asariweb.net/

アサリの島流し 80日目 - 魔法にかけられて

車とバイクの免許を取る、ということが果たせぬまま30代に突入してしまった私にとって、ドライブとは夢の出来事であった。普通に大したことではないかもしれないが、様々な事情で果たせなかったドライブ。

ああドライブ。

それはこの島で人生ファーストドライブをする為だったのだと思うと…人生とはなんとドラマティック!(テンション)
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母島の集落があるのは南から1/4や1/3位の場所で、南崎には歩いて行けたけど、北にはさすがに行けなかった。小さいようで結構大きな島である。まだ大部分が未踏地。

そんな中、先日バイクを譲ってもらってやっと足を手に入れた!最初は自転車より遅いくらいのおっかなびっくりも、毎日チョイ乗りを繰り返して随分慣れてきた。ようやく初めての免許のいる乗り物も楽しめるようにもなった。

これは…行くしかない!
ドライブ!

仕事が早く終わってみつけたチャンス、エプロンを放り投げて飛び乗った。

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北港までの道のりはどこもかしこも目新しく、絶景だらけ。晴れた陽光差し込む森と広大な海が交互に現れる美しい山道が続く。
行ったことなかった場所がたくさんあった。

そして走ること30分ちょい。

北港。
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地図はこちら。
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魔法がかかったような場所だった。
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とても静かで透き通るような海がずっと果てまで続く。

岸壁…のあとかな?
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今日は行かなかったけど、ここから大沢海岸へ続く道。幻の生き物がいそうな鬱蒼とした森のトンネル。
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この場所で私は、すっかり魔法にかけられた。

すうっと吸い込まれる空気をどう表現したらいいかわからない。

ロース記念館の解説してる人生の大先輩から聞いた、島に今の20倍人がいた時の話を思い出す。今は道すがらに工事や植物を手入れする人がいるだけの、ほんとうに何もない港。

でも多分、私はここに丸一日ずっとただ座っていても楽しいと思う。
この世にこんな場所があることだけで、地球に生まれてよかった気がするくらいだ。
母島に素晴らしい場所はたくさんあったけど、こんな場所に来たのは初めてだ。

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小さな頃、CMでとあるRPGゲームが流行ったことがあった。その頃の小学生だった私もプレイして、その中で出てくる「僕の場所」「僕の音」を探す冒険に影響されて、とても夢を見たのを思い出す。

今日はまるで、僕の場所、との出会いだった。
ここで私は、僕の音、を探すんだろうな。


音楽でもなんの作品でも、毎日必要な何かでも、なんでも…十分年齢は大人になったことだし、私もそういう誰かの「僕」の夢を、次に作ろう。

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戻ってきた夜、同僚と飲んでしゃべりながら、いつもの脇浜に寝転がって丸い天球を見ていた。この島に来て、星は今まで思ってたよりずっと早く動いてるのを知った。

あの場所で私がかけられたのはきっと、世界が一段と素敵に思える魔法だったんだろう。