アサリの島流し 246日目 - 月に梯子をかける
感覚にも梯子がある。
壮大でかけ離れたように感じるものでも、その間にあるものが飛び石のようにつないで、梯子をかけた様にリアリティを得ることがある。
例えば夜空なら、見上げた木の枝、三角屋根の端、電線、雲…。
ない方がいいようで、あった方が夜空のリアリティが増して、まるで星を掴めそうな感じがしたりする。
(もっともこの島は、飛び石になりそうな島もなくがらんと海の真ん中にあるが、現に私は暮らしてる。)
がらんとした空に飛び石を埋めて月までの道筋がなんだか見えてきた、私の今はそんな感じかなとも思う。
きっと、私のなかに元号があったとしたら、それが変わりそうなくらいのことがいろいろ起きているけど、それはまた次の機会に書きましょう。
先週は二つの祭りがあった。
(この島はほんとにイベントが多い!)
ひとつはフラダンスの祭典、母島オハナ。
もうひとつはこの島の農業者が天災がなく豊作になる様に祈る御嶽神社のお祭り。
小笠原の女性が一番たくさん参加してる文化なんじゃないかと思うフラダンス。
南の島つながりだったりで沖縄の三線が好きな人がたくさんいたり、ミクロネシアの空気が漂う南洋踊りだったり「取り入れる」ことが多いのは、この島の若さなんだと思う。
自然は手付かずのガラパゴスの様に独自の歴史を重ねているけど、地理的な難しさから人間はまだまだやっとこの地に歴史を作り始めた時期に当たると思う。
それがとても素敵な形に蕾をつけているのが小笠原のフラダンス。
職場の同僚もここではじめたよ!
気候の似たハワイの音楽はそのままでもしっくり馴染むけど、小笠原の日本語に合わせたフラは、日舞とフラの間を行く様な奥床しい日本女子の情熱みたいなものを感じる。
特に素敵だなと思ったのは若い高校生男女が踊るフラの曲。
島の若い子の、なんとも言えない甘酸っぱい感じ。まあ、実の中身はちゃんとませてるかもしれないけどね 笑
南の島らしさってのは、子供に恵まれたこの島では、子供や若い子に詰まってるのかもしれないと思った。
男子の男フラも、変な衒いなくやり切るパワフルさで、なんかここに来てフラダンスのイメージ変わったなあとしみじみ。
その女達の一大イベント翌日は、農家さん達の一大イベント。
小さな子からお年寄りまで、農家に関わる人がずらりと集まったのは初めて見た。
母島には在住の人がいない為、父島の宮司さんが出張して祝詞をあげている。
というか、神社のお祭りの式って、七五三か誰かの結婚式しかみたことなかった!
祝詞はお経よりわかりやすい言葉なんだなあと感心した。のは、この日の祝詞が「太平洋の大海原に…」で始まった小笠原らしいものだったから。
お祓いを受け玉串をささげる農家の皆さんの後ろ、密かに聞き入ってしまたた…。
と、なんで農家じゃないのに祝詞全部聞くくらいから参加してたかというと…。
この島来て以来ずっと練習していた、小笠原太鼓のデビュー舞台があったから!
最初の奉納の太鼓はもちろん上手な先輩が叩くけど、祭りの宴会はカラオケ大会につづいた佳境、毎年太鼓同好会新人のデビュー太鼓お披露目があるのです。
今年は4人、ノエルちゃんリエちゃんの二人は学校の先生、もう二人は宿業同業にして同級生のみどりちゃんと私。
私はライブに慣れてるとはいえ、みんなの緊張に当てられながら、精一杯叩いた。
小笠原太鼓は、ドンドコと呼ばれる均一な下打ちビートに、フレーズを組み合わせた上打ちを即興で合わせる2人太鼓。
どこかテクノや8ビートに近い均一さを重視しながら土から鳴るような重低音に、父島では男性的で鋭い、母島では女性的で巧みな軽やかさがある上打ちが特徴。
8〜9月の繁忙期は練習に間に合わない日もありながら、師匠からも熱い指導をいただき、どうにか仕上げてもらった。
みんな「すごいよく叩けてたよ!」と褒めていただき嬉しかった。
…けど、子供に見られてるのが一番緊張した…。
だって、この島の小学生、みんな叩けるんだもの…(つまり島育ちの大人はみんな)汗
フラの日も太鼓の日も、最後はいつも通り飲んでたけどね…!
この島に来る時にだってそんな風に思ったかもしれないけど。
最近、ひとつひとつの飛び石がたくさん埋まって、今はもっとはっきりそんな気がしてる。
私は静かに、何か見つけたのかもしれないって。