アサリの島流し 331日目 - 走れ!乳房山登山隊
離れていても繋がって、どこかのできごとを知ることができる時代である。
島に来てからこの1年の間しこしこ書き連ねたこのブログを「読んでるよ」と声かけてもらうことが、季節を追うごとにどんどん増えた。
バンドの知り合いやお客さん…仲良くなった島民…10年以上ぶりに連絡来た田舎の旧友の知り合いの知り合い…島に観光で来るお客さんまで…実にとんでもなくいろいろな人から声をいただくごと…恐縮してリアクションがカクカクしてしまう私だった。
それでも読んだみなさんの、何か楽しい暇になっていたなら、この上ない幸せであります。
今、私は東京の冬にいます。
引き上げ直前は全く書く暇がなかった。
もったいなくて書けなかった。
島にいる約450人くらいの、太陽の光で見えて触れることのできる人達と、一緒にいる。そのことだけがリアルだった。
今日という日に、 すれ違い様に挨拶をしたり、握手をしたり、手を振って見送ったり、仕事したり酒飲んだり音楽を一緒に演奏したり。
その一人一人がその瞬間一番大事な今だった。
内地に戻ってからも慌ただしく、記事が引き上げの日に追いつくまでまだしばらくかかりそうだけど、薄れない内に追いかけよう。
年末年始のお客さんが出港して静かさが戻った1/3。実は一年居ていまだ乳房山に登っていなかった(お客さんに散々案内しておきながら…)私に何人か友達が付き合ってくれて、最初で最後の登山遠足に出かけた。
天気は晴れ、心地いい気温。
小さな隊長を先頭に、しりとりや連想ゲームをしながら登る。
最近仕事やら飲みやらで集落の中にばかりいて歩いていなかった大人は、最初の坂道からゼイゼイしながら登る。
子供達は元気だ。途中道がゴツゴツするまで、アースデイと同じく裸足で登るくらい。(途中で履いた…のもギョサンだし!島っ子の足はたくましい!)
道脇の植物やカタツムリ。
不意に抜ける空。
子供達は歌うみたいに笑う。
道中現れたがじゅまるの森。
かくれんぼしよーよ!と小さな隊長の発案により盛大な道草がはじまる。
子供は遊び方が上手い。瞬く間に数メートルの高さをスルスル登る。
あんまり早く数えちゃダメ!と言われて、それならと九九で数える。時々間違えながら 苦笑
探すときは音を頼りに。すぐしびれ切らしてソワソワする音が聞こえる。
大人だってすごいんだぞ!とバンバン見つけてると、大きな友達もはるか上にいた。
遊びに夢中ですっかりお腹が空いてきた一行は腹時計を頼りに山頂を、というかおにぎりを、目指し再始動。
青い空に呼ばれる様に初めて小笠原で一番高いところにたどり着いた。
抜群に澄んでて父島までよく見える。
小さな展望台でおしくらまんじゅうみたいな登頂記念。
待望のおにぎりタイム!案外早く登り過ぎて11時前に食べだした…。
※誰かがリアル「おむすびころりん 」した直後
帰り道は以前絵を描いたけどまだ見たことなかった…
オカモノアラガイがフィーバーの如く現れた!
山中でたまたま会った島の人とも、大人達大興奮!触れずにツノを出させる秘技を編み出したりして写真撮りまくりの観察会は20分程盛り上がった。
その合間に待ちきれなくなった子供達がしびれ切らして先に行ってしまった。
あのナメクジみたいなのがそんなにおもしろいの⁈と希少な生き物も子供達にはいつもそばにいる生き物なんだろう…。
私よりはるかに慣れてるけどせっかくだし一緒に行こうよー!と私。美しい南の島の山を走っては撮り走っては撮り…追いかけることにした。
稜線を縫う様に下る帰り道。
時々、おうい!とかすかに呼びかけ合いながら…。
原始の森の様で
近代の爪痕も
転がる様に走って追いつくのに結局1km以上走る30代半ばの私…滝汗
「あっ!アサリちゃん!意外と早かったね!」
と言われて追いついたのは、もう集落がしっかり見える見晴台のあたりだった。
私達の家って小さいねー!
でも学校は大きい!
ああ、私にとってすごい南の果ての島。
大人にとって希少な固有種の溢れた世界遺産の島。
でもこの子らにとって、社会のほとんどすべてで、暮らす家。
昼過ぎに無事下山。
しかし一番小さな隊長以外全員ヘトヘトになって私もすっかり昼寝した。
明日は筋肉痛かなあ…
観光協会に登頂記念証をもらいに行く夕方、もうすぐ夕焼け、漁船には正月飾り。
ここが今の私の暮らす家。
それは途中にあった「お母さんの木」に育つ、小さな植物みたいだと思った。
また、種が飛んでどこかに。