アサリの島流し 194日目 - そして誰もいなくなった<嵐の父島その2>
……。
続きを書くのが中々進まなかった…。
仕事も思い出も、まだしまい切れないほど山積みだったので…。
ぱっぱと上手くいかないこともあるけど、そんな時はさ、少しずつコツコツ進めていこう。
父島へ行った2日目の朝。
友達達は精算を早く済ませ、皆でパン屋に並ぶ。 私はとりあえず昼飯を買っとく。
まだ宿は決まっておらず、先のことは見えない。
7:30発のはは丸は皆を乗せて呆気なく出発。
なんだ、この無性な寂しさは…!
なんとか今夜の宿早く決めたい…と焦るも、中々朝は電話がつながらない。(同じ宿業だからわかるが…)
元職場の先輩が宿を当たってくれたりしたが空いておらず、端から電話して30分、ようやく繋がり、友達が昨夜一人泊まったドミトリーベッドをなんとか確保、JAMMIN設営集合場所へ。
当たり前だがみんな初対面…。1人紛れた感じでおろおろしながら、打ち合わせの模様を端っこでぽつんと聞いている。
15分後…協議の末に中止が決定…。
もちろん予定はこれしかなかったので、どうしたらいいか呆然とする。
とにかく前日までにされていた仕度を片付けにだけ参加、何人かの人とご挨拶してる間に…。
終了…して解散。
台風が待ち構えているだけである。
まだ青い空をほぼ放心状態で見つめながら、宿の部屋に入れるのを庭で待たせてもらう。
こ、これからどうしよう…。
呆然自失の私は何をしたらいいかも浮かばず、ただ近所を行ったり来たりする。
昼のうちは晴れていた空も、どんどん雲が立ち込め、夕方には風も変わりはじめた。
私なんで残っちゃったんだろ。
もう1時間早かったら船に飛び乗れたのに、私なんで1人でこんなとこぶらついてるんだ。
街角でたまにJAMMINの話題が上がるのを聞くだけでもどんどん落ち込む。
ひたすら天気同様、私の心中も雲が立ち込め風が強くなってきた。今にも雨が降りそうだ。
もう自棄酒かっくらって寝るしかない。
と、酒を買ってベッドでごろごろしてると、1人、また1人と同部屋の人が帰ってきた。
今夜もみんなでごはん作って飲むから一緒にどうですか?と、声をかけてもらった。
帰ってくる内地から来た旅人達は、なんだか台風を前にしても明るい。そういやうちのお客さんもそうだったな…。
帰り予定だった翌日のははじま丸「欠航のお知らせ」が放送される頃には、部屋の人はみんな大集合していた。
なんだか合宿のようなテンションでみんないそいそ料理をはじめてる。なんだかそのまま流されるように、私もそれに加わりはじめた。
それぞれはみんな一人旅みたいだが、すっかり打ち解けてる。勢いよく増える仲間達に、私は名前を覚えるのが必死だ。
入り口も雨戸下すだろうからもうどこにも出れないし、オリンピック観ながら飲もう!と、すっかりみんな元気良く乾杯。
人の孤独というのは独り、という状況ではないのね。心の不安が孤独になるのね。
誰もいなくなって私は1人で嵐を越えなきゃならないと思ってたけど、思わぬ心強い仲間がたくさん現れた。私はあっという間に孤独じゃなくなった。
やがてみんな床について電気を消す頃には、入口の雨戸も激しく唸り始める。
嵐は翌朝も唸ってたけど、比較的良く眠れた。
空はまだ雲の中だけど、心の台風は一足早く、もう私から離れはじめてた。
嵐が過ぎた後…台風一過のような素敵な日が待ってたからね。
まだ、つづく。